福島の人口動態・高齢化と原発避難が二層で進む
山形、宮城、岩手、秋田、青森と、東北五県を市町村単位で並べてきた。最後の福島は、他の五県と同じ「働き手の激減が高齢化率を押し上げる」構図を持ちながら、そこに2011年の原発事故という別の力学が重なる。県計では、生産年齢人口が20年で約25%減り、会津の奥山では高齢化率が5割を超えた。だが浜通りを中心とする原発避難12市町村では、人口が高齢化ではなく避難と帰還で動いており、双葉町は2020年も居住人口がゼロ、大熊町や富岡町では現役世代の比率が高く高齢化率がむしろ低く出る。標準の高齢化分析が効く地域と効かない地域が同居する、二層の人口動態を市町村ごとに読み解く。
01東北の最後、二層の福島
福島県は東北で最も南に位置し、面積は全国3位と広い。県土は西の会津(山がちで豪雪の盆地)、中央の中通り(福島・郡山を結ぶ都市ベルト)、東の浜通り(いわき・相馬の太平洋岸)という三つの地域に分かれる。県計の高齢化率は約32%で、東北6県のなかでは仙台を抱える宮城に次いで低い。郡山市・いわき市・福島市という規模の大きな都市を抱えるためにあたる。
そこで、国勢調査の2000年から2020年までの20年を市町村ごとに並べる。ただし福島には、他の五県になかった難しさがある。浜通りを中心とする原発避難区域では、人口の増減が少子高齢化ではなく、避難と帰還と復興で決まる。そこで本稿は、まず中通り・会津を中心とする通常の分析を示し、そのうえで避難12市町村を別立てで扱う。
02高齢化の段階でみる福島
高齢化がどこまで進んだかで、福島の59市町村を整理する。この類型は、高齢者人口の推移をもとに本稿で独自に設けた区分にあたる。高齢者数が既にピークを越えた量ピークアウト型(A、8市町村)、高齢者数がなお増える高齢化進行・移行型(B、29市町村)、高齢者数はこれからピークを迎えるが都市機能の基盤が厚い都市・基盤厚型(C、10市町村)の三つに分ける。そのうえで、避難で人口動態が別の力学で動く原発避難・復興途上型(D、12市町村)を分けて示す。
C型(四都市・中通り都市ベルト)は、県内で相対的に若い一角をつくる。福島市・郡山市・会津若松市に、太平洋岸の中核市いわき市が加わり、白河市・須賀川市や、人口を増やした西郷村・大玉村がこれに連なる。A型は、若年層の流出が早く高齢者数さえ頂点を過ぎた地域で、金山町・昭和村・三島町など会津の奥山に集中する。B型は、その中間の地方都市にあたる。会津が高く中通りが低いという西高東低の傾きが、地図にはっきり表れる。
03高齢化が進む町ほど、支え手が細る
ここからの図は、人口動態が通常の少子高齢化で動く避難区域を除く47市町村を対象とする。「負担」の重さを測る老年従属指数(生産年齢人口100人あたりの高齢者数。65歳以上人口÷15〜64歳人口×100で表す)でみると、福島でもどの類型でも指数が上がり続けている。量ピークアウト型は2000年の約54から2020年の約82へ、移行型は約38から約67へ、都市・基盤厚型でも約28から約51へ上昇した。県計でも2020年に約56にのぼる。
2020年の高齢化率と、2000年からの働き手の増減率をとると、両者はきれいな右肩下がりに並ぶ。連動の強さを示す相関係数は−0.89で、他の五県と同じ水準にある。四都市と中通りの都市ベルトは左上に位置し、高齢化率が低く働き手の減少も小さい。反対に、会津の奥山(金山・昭和・三島)は右下で、高齢化率が5割を超え、働き手も4割から半分以上減った。
04高齢化の正体は働き手の激減、高齢者数はなお増加
福島の高齢化率が上がった理由も、高齢者が急に増えたからではない。県計の生産年齢人口は、2000年の約135万人から2020年の約102万人へ、20年で約25%減った。一方、高齢者人口は約43万人から約57万人へ約33%増えた。分母となる総人口が縮むなかで高齢者の割合が上がるのが、高齢化率の正体にあたる。ただし2011年以降の人口減には、通常の少子化・流出に加えて、原発事故による県外への避難が重なっている点に留意が要る。
高齢者数は、県全体ではなお増加が続いている。2015年から2020年でも約3.0万人増えたが、増加ペースはやや鈍化している。中通りや会津でも、これから高齢者数が最も増えるのは、いま比較的若い四都市の周辺にあたる。介護・医療の需要は、割合の高い会津の奥山で先に、数の多い都市部で後から重くなる、という二段構えになる。
05浜通りの原発避難 ─ 別の力学で動く人口
福島を際立たせるのが、浜通りを中心とする原発避難12市町村(田村市・川俣町など中通りの一部を含む)にあたる。2011年3月の福島第一原発事故により、双葉郡を中心に避難指示が出され、多くの町村が全域または大半で人が住めなくなった。ここでは人口が、少子高齢化ではなく、避難と帰還で動く。
その姿は、通常の高齢化とは似ても似つかない。双葉町は、2020年の国勢調査でも居住人口がゼロである。大熊町・浪江町・富岡町は、2011年に町の大半が避難し、2015年の国勢調査では居住人口がほぼゼロだったのち、2020年までに一部が帰り始めた。ただし2020年の居住人口は現役世代の比率が高く、高齢者の割合が小さい。その結果、大熊町の高齢化率は10.3%、富岡町は25.1%と、県内でむしろ低く出る。これは町が若返ったのではなく、居住人口の年齢構成が偏っているためにあたる。飯舘村・葛尾村・川内村のように、高齢者が先に戻り高齢化率が5割前後に達した村もある。同じ避難区域でも、帰還の仕方によって数字は大きく振れる。
これらの市町村では、高齢化率や老年従属指数という通常の指標が、地域の実態を表さない。だからこそ本稿は、避難12市町村を標準の分析から切り離して扱っている。ここで問われているのは高齢化への備えではなく、人がどれだけ、どの世代から戻るのかという、復興そのものの行方にある。
0659市町村を高齢化率で並べる
市町村ごとの数字を、高齢化率の高い順に並べる(避難区域は末尾にまとめた)。通常分析の対象では、最も高いのは会津の金山町で60.9%、最も低いのは西郷村で25.4%。同じ県のなかで、高齢化率に35ポイント以上の開きがある。末尾の避難区域では、高齢化率も働き手の増減も避難の影響を強く受けており、双葉町は居住人口がゼロのため高齢化率を示せない。
| 市町村 | 地域 | 高齢化率 2020(%) | 高齢者数 ピーク年 | 生産年齢 20年増減(%) | 高齢者数 20年増減(%) |
|---|---|---|---|---|---|
| 金山町 | 会津 | 60.9 | 2005 | -56.4 | -21.9 |
| 昭和村 | 会津 | 55.6 | 2000 | -42.4 | -19.7 |
| 三島町 | 会津 | 53.9 | 2005 | -54.7 | -16.6 |
| 只見町 | 会津 | 47.2 | 2005 | -39.5 | -1.8 |
| 西会津町 | 会津 | 47.1 | 2005 | -44.0 | -16.5 |
| 柳津町 | 会津 | 45.3 | 2005 | -44.6 | -7.3 |
| 下郷町 | 会津 | 44.8 | 2005 | -41.4 | -2.0 |
| 国見町 | 中通り | 42.2 | 2020 | -38.8 | +35.6 |
| 南会津町 | 会津 | 42.0 | 2005 | -40.7 | -0.7 |
| 鮫川村 | 中通り | 40.0 | 2005 | -41.3 | -1.6 |
| 会津美里町 | 会津 | 39.9 | 2020 | -36.7 | +4.3 |
| 猪苗代町 | 会津 | 39.7 | 2020 | -36.6 | +12.8 |
| 矢祭町 | 中通り | 39.4 | 2020 | -33.4 | +6.5 |
| 古殿町 | 中通り | 39.2 | 2005 | -37.2 | +1.1 |
| 塙町 | 中通り | 38.6 | 2020 | -35.4 | +9.6 |
| 檜枝岐村 | 会津 | 38.5 | 2010 | -46.5 | +9.6 |
| 桑折町 | 中通り | 38.0 | 2020 | -29.8 | +29.4 |
| 磐梯町 | 会津 | 37.5 | 2005 | -29.2 | +7.9 |
| 石川町 | 中通り | 37.3 | 2020 | -37.3 | +21.7 |
| 北塩原村 | 会津 | 37.1 | 2020 | -38.6 | +2.4 |
| 天栄村 | 中通り | 36.9 | 2020 | -33.4 | +14.1 |
| 喜多方市 | 会津 | 36.8 | 2015 | -30.7 | +5.3 |
| 会津坂下町 | 会津 | 36.7 | 2020 | -29.1 | +7.7 |
| 伊達市 | 中通り | 36.2 | 2020 | -30.5 | +29.1 |
| 小野町 | 中通り | 35.9 | 2020 | -32.5 | +13.7 |
| 平田村 | 中通り | 35.3 | 2020 | -36.2 | +26.9 |
| 三春町 | 中通り | 34.8 | 2020 | -26.8 | +37.5 |
| 二本松市 | 中通り | 34.6 | 2020 | -28.9 | +25.9 |
| 湯川村 | 会津 | 34.6 | 2020 | -21.1 | +8.7 |
| 浅川町 | 中通り | 34.2 | 2020 | -29.5 | +29.4 |
| 新地町 | 浜通り | 33.0 | 2020 | -22.6 | +24.3 |
| 棚倉町 | 中通り | 32.1 | 2020 | -26.6 | +21.9 |
| 泉崎村 | 中通り | 32.0 | 2020 | -18.2 | +41.2 |
| 玉川村 | 中通り | 31.7 | 2020 | -26.7 | +33.8 |
| いわき市 | 浜通り | 31.5 | 2020 | -20.4 | +44.6 |
| 会津若松市 | 会津 | 31.5 | 2020 | -24.1 | +32.2 |
| 相馬市 | 浜通り | 31.4 | 2020 | -20.1 | +27.0 |
| 矢吹町 | 中通り | 31.4 | 2020 | -21.3 | +50.4 |
| 福島市 | 中通り | 30.6 | 2020 | -18.8 | +55.2 |
| 中島村 | 中通り | 30.3 | 2020 | -15.1 | +46.1 |
| 白河市 | 中通り | 29.9 | 2020 | -19.4 | +40.7 |
| 須賀川市 | 中通り | 28.7 | 2020 | -16.2 | +47.3 |
| 本宮市 | 中通り | 28.4 | 2020 | -10.8 | +39.7 |
| 鏡石町 | 中通り | 27.9 | 2020 | -13.3 | +58.6 |
| 大玉村 | 中通り | 27.7 | 2020 | -1.9 | +36.0 |
| 郡山市 | 中通り | 27.1 | 2020 | -14.8 | +65.9 |
| 西郷村 | 中通り | 25.4 | 2020 | +0.4 | +79.9 |
| 飯舘村 | 浜通り | 57.5 | ─ | -87.3 | -57.8 |
| 川内村 | 浜通り | 49.4 | ─ | -53.4 | -3.9 |
| 葛尾村 | 浜通り | 47.1 | ─ | -79.2 | -61.2 |
| 川俣町 | 中通り | 42.3 | ─ | -43.4 | +10.9 |
| 楢葉町 | 浜通り | 38.1 | ─ | -60.7 | -24.2 |
| 南相馬市 | 浜通り | 36.8 | ─ | -35.1 | +26.4 |
| 田村市 | 中通り | 36.0 | ─ | -30.2 | +17.6 |
| 浪江町 | 浜通り | 33.9 | ─ | -92.4 | -88.4 |
| 広野町 | 浜通り | 31.8 | ─ | -17.7 | +30.1 |
| 富岡町 | 浜通り | 25.1 | ─ | -86.8 | -83.4 |
| 大熊町 | 浜通り | 10.3 | ─ | -89.0 | -95.7 |
| 双葉町 | 浜通り | ─ | ─ | -100.0 | -100.0 |
類型 A(左端navy)=量ピークアウト型:2015年から2020年にかけて高齢者数が明確に減少した8市町村(会津の奥山と喜多方。ピークは2000〜2015年)。B(mid-blue)=高齢化進行・移行型:高齢者数がなお増える29市町村。C(gray)=都市・基盤厚型:福島市・郡山市・いわき市・会津若松市の四都市と中通りの都市ベルト10市町村(相対的に高齢化率が低い)。D(破線)=原発避難・復興途上型:避難指示が出た12市町村で、数値は避難と帰還の影響を強く受ける(双葉町は居住人口ゼロ)。山形・宮城・岩手・秋田・青森・福島の6ノートで共通のA・B・C類型に、福島のみDを加えた。A〜Cは高齢化率降順、Dは末尾に配置。地域は会津・中通り・浜通りの3区分。高齢化率は年齢不詳を除いて算出(県公表値は不詳補完で県計31.7%)。
結論:福島は高齢化と原発避難が二層で進む
福島県59市町村を国勢調査の20年で並べると、中通りと会津は他の東北五県と同じ道を辿っている。高齢化率は県計で約32%と6県では宮城に次いで低いが、その正体は高齢者の増加以上に働き手の激減にあり、生産年齢人口は約25%減った一方、高齢者人口はなお約33%増え、増加が続いている。会津の奥山では高齢化率が5割を超え、老年従属指数は80を超えた。だが浜通りを中心とする原発避難12市町村は、この一般則の外にある。双葉町は2020年国勢調査で居住人口がゼロ、大熊町や富岡町は現役世代の比率が高く高齢化率がむしろ低い。人口が高齢化ではなく避難と帰還で動くこれらの地域は、標準の分析から切り離して読むほかない。福島の人口動態は、高齢化という全国共通の課題と、原発避難という福島固有の課題が、二層になって同時に進んでいる。