秋田の人口動態・県全体が高齢化の最前線を走る
山形、宮城、岩手と、東北三県を市町村単位で並べてきた。四つ目の秋田は、高齢化率が県計で約38%と全国で最も高く、人口減少も最も速い。数字の正体を分けると、高齢化率を押し上げたのは高齢者が増えたこと以上に働き手が20年で3分の1減ったことにある。しかも高齢者数そのものも2015年以降ほぼ頭打ちになり、秋田は高齢者の「数」のピークにも全国で最も早く近づいている。他の三県がこれから向かう先を、秋田は市町村単位で先に映し出す。
01全国の最前線を走る秋田
秋田県は、高齢化率が全国の都道府県で最も高く、人口の減少率も最も大きい。2020年の高齢化率は約38%で、山形(約34%)や岩手(約34%)をさらに上回る。地方の高齢化を語るときの「行き着く先」が、秋田では既に現実になっている。
そこで、山形・宮城・岩手と同じ枠組みで、国勢調査の2000年から2020年までの20年を市町村ごとに並べる。高齢化率(65歳以上が総人口に占める割合。年齢不詳を除いて算出する)、働き手にあたる生産年齢人口(15〜64歳)の増減、高齢者数がいつ頂点を迎えたか。この三つを重ねると、秋田の高齢化がどこまで進んだかがはっきりする。他の三県との違いは、程度だけでなく局面にある。
02高齢化の段階でみる秋田
高齢化がどこまで進んだかで、秋田の25市町村は三つに分かれる。山形・宮城・岩手と同じ三類型で、高齢者数が既にピークを越えた量ピークアウト型(A、6市町村)、高齢者数がなお増える高齢化進行・移行型(B、17市町村)、そして高齢者数はこれからピークを迎えるが都市機能の基盤が厚い都市・基盤厚型(C、2市)にあたる。ただし秋田では、このC型が県都の秋田市と通勤圏の潟上市の2市しかない。盛岡都市圏や仙台圏のような、若いベッドタウンの層を欠いている。
他の三県では、C型は県庁所在地を中心に若い市町村がまとまり、高齢化率の低い一角をつくっていた。秋田にはその一角がほとんどない。最も若い秋田市でさえ高齢化率は約32%で、岩手の盛岡市(約28%)や滝沢市(約26%)より高い。県全体が、他県なら最も高齢化の進んだ層にあたる水準に届いている。地図が一様に濃く見えるのは、そのためにあたる。
03高齢化が進む町ほど、支え手が細る
「負担」の重さを測る老年従属指数(生産年齢人口100人が高齢者を何人支えるか)でみると、秋田ではどの類型でも指数が急上昇している。量ピークアウト型は2000年の約48から2020年の約94へ、移行型は約42から約79へ達した。県都を含む都市・基盤厚型でも、約27から約56へ倍増している。県計では2020年に約71で、働き手のほぼ2人で高齢者1人を支える水準にある。県内で最も若い秋田市圏でも、負担は他県の平均を大きく超えている。
2020年の高齢化率と、2000年からの働き手の増減率をとると、両者はほぼ一直線に並ぶ。連動の強さを示す相関係数は−0.96で、山形・宮城・岩手より強い。特徴は、この帯から外れる市町村がほとんどない点にある。他の三県では左上に「高齢化率が低く働き手も保たれた」一群があったが、秋田では最も条件の良い秋田市でさえ高齢化率が3割を超え、働き手を4分の1減らしている。県北の山あい(上小阿仁・藤里)は右下で、高齢化率が5割前後まで達し、働き手は半分以上減った。
04高齢化の正体は働き手の激減、そして高齢者数はピークへ
秋田の高齢化率が全国で最も高い理由は、高齢者が急に増えたからではない。県計の生産年齢人口は、2000年の約75万人から2020年の約50万人へ、20年で33%減った。働き手の減り方は、山形・宮城・岩手のいずれよりも大きい。高齢者が3割弱増える一方で、働き手や子どもはそれ以上の速さで減っている。分母となる総人口が急速に縮むなかで高齢者の割合が上がるのが、秋田の高齢化率の高さの正体にあたる。
もう一つ、秋田が他の三県と決定的に違う点がある。高齢者数そのものが、既にピークへ近づいている。県計の65歳以上人口は2010年代前半まで増えたが、2015年から2020年の5年間の増加は約1.4万人にとどまり、伸びはほぼ止まった。25市町村のうち6市町村では、高齢者数が既に頂点を過ぎて減少に転じた(ほぼ横ばいの大潟村を含めれば7市町村)。宮城が「これから高齢化の波が来る」段階、岩手が「波の途中」だとすれば、秋田は波の頂を越えつつある段階にある。これから訪れるのは、高齢者すら減り、人口全体がさらに細っていく局面になる。
0525市町村を高齢化率で並べる
市町村ごとの数字を、高齢化率の高い順に並べる。最も高いのは県北の上小阿仁村で53.7%、最も低いのは県都の秋田市で31.8%。最も若い秋田市でさえ3割を超えている点に、秋田の特殊さがある。右端の「高齢者数の20年増減」をみると、高齢化の進んだ市町村ほど伸びが小さく、上小阿仁村・藤里町ではマイナスに転じている。ピーク年の列は、既に頂点を過ぎた市町村が2005年か2015年、なお増加中の市町村が2020年を示す。
| 市町村 | 地域 | 高齢化率 2020(%) | 高齢者数 ピーク年 | 生産年齢 20年増減(%) | 高齢者数 20年増減(%) |
|---|---|---|---|---|---|
| 上小阿仁村 | 県北 | 53.7 | 2005 | -53.6 | -7.5 |
| 藤里町 | 県北 | 48.8 | 2005 | -52.7 | -4.2 |
| 五城目町 | 中央 | 47.3 | 2020 | -47.5 | +15.0 |
| 男鹿市 | 中央 | 47.2 | 2020 | -51.7 | +18.0 |
| 八峰町 | 県北 | 46.2 | 2015 | -45.3 | +9.4 |
| 三種町 | 県北 | 45.5 | 2020 | -45.9 | +16.8 |
| 小坂町 | 県北 | 44.9 | 2005 | -46.0 | +3.1 |
| 北秋田市 | 県北 | 44.6 | 2015 | -42.2 | +10.7 |
| 八郎潟町 | 中央 | 44.4 | 2020 | -43.4 | +37.4 |
| 井川町 | 中央 | 43.5 | 2020 | -40.3 | +24.5 |
| 仙北市 | 県南 | 43.0 | 2015 | -41.9 | +17.0 |
| 能代市 | 県北 | 41.6 | 2020 | -38.0 | +25.3 |
| 鹿角市 | 県北 | 40.9 | 2020 | -38.8 | +13.3 |
| 湯沢市 | 県南 | 40.3 | 2020 | -37.9 | +9.1 |
| 美郷町 | 県南 | 39.6 | 2020 | -34.4 | +14.6 |
| 羽後町 | 県南 | 39.4 | 2020 | -37.3 | +2.0 |
| 大館市 | 県北 | 39.3 | 2020 | -33.6 | +25.4 |
| 横手市 | 県南 | 39.1 | 2020 | -33.5 | +16.5 |
| にかほ市 | 県南 | 39.0 | 2020 | -36.3 | +29.8 |
| 大仙市 | 県南 | 38.7 | 2020 | -33.4 | +17.7 |
| 東成瀬村 | 県南 | 37.8 | 2020 | -25.8 | +0.7 |
| 由利本荘市 | 県南 | 37.5 | 2020 | -32.2 | +25.4 |
| 潟上市 | 中央 | 35.5 | 2020 | -27.6 | +62.2 |
| 大潟村 | 中央 | 31.9 | 2015 | -26.8 | +97.5 |
| 秋田市 | 中央 | 31.8 | 2020 | -24.2 | +57.8 |
類型 A(左端navy)=量ピークアウト型:高齢者数が2015年から2020年にかけて明確に減少へ転じた6市町村。B(mid-blue)=高齢化進行・移行型:高齢者数がなお増える17市町村(高齢者数がほぼ横ばいの大潟村・羽後町・東成瀬村を含む。大潟村の2015→2020の減少は7人で年齢不詳の変動幅の範囲内)。C(gray)=都市・基盤厚型:都市機能の基盤が厚い秋田市・潟上市の2市(相対的に高齢化率が低く働き手も比較的保たれる)。山形・宮城・岩手・秋田の4ノートで共通の類型で、高齢化率降順に配列。ピーク年は直近2015→2020で高齢者数が増加なら2020、減少ならその最大年。20年増減は国勢調査2000〜2020年による。C型の財政面での裏づけは次稿で扱う。
06秋田が映す、地方の行き着く先
地図と数字を重ねると、秋田の高齢化には他の三県のような地域差が乏しい。地域別の高齢化率は県南39%・中央40%・県北45%で、県北の山あいがやや高いものの、県全体が一様に高い水準へ収れんしている。他県では中心と周縁のあいだにあった差が、秋田では小さくなっている。県全体が、高齢化の同じ局面に入りつつあるためにあたる。
量ピークアウト型(A)は、上小阿仁村・藤里町・小坂町など県北を中心に、八峰町・北秋田市・仙北市に広がる。これらでは高齢者数が2015年前後を境に減少へ転じ、人口そのものが薄くなっている。上小阿仁村は20年で人口を約4割減らし、高齢者数さえ減り始めた。人口を前提に組み立てられた集落や生活の基盤を、どう畳み、どう束ねるかが、他地域に先立って問われている。
都市・基盤厚型(C)の秋田市・潟上市でさえ、安全地帯ではない。老年従属指数は20年で倍増し、高齢者数はこれから最も増える。県都に人口が集まる流れはあるが、その秋田市も既に人口を減らしている。若いベッドタウンの層を欠くまま高齢化が進むため、県内で人口を引き受ける受け皿が乏しい。県外への流出が続けば、県全体の縮小はさらに速まる。
秋田を一つの平均でみると、「高齢化率が全国最高の、最も縮む県」という一言で終わってしまう。だが市町村に分けて並べれば、そこに映るのは高齢者数のピークを越えつつある地方の姿にあたる。宮城の仙台圏に「これから来る波」も、岩手や山形が通ってきた道も、その先に何が待つかを、秋田は先に示している。他の三県を読むとき、秋田は「行き着く先」を確かめるための鏡になる。次稿では、この人口動態に市町村の財政を重ね、縮小の局面に入った地域がどう財政を組み立てているかを掘り下げる。
結論:秋田は高齢者数のピークを越えつつある
秋田県25市町村を国勢調査の20年で並べると、高齢化率は県計で約38%と全国最高だが、その正体は高齢者の増加以上に働き手の激減にある。生産年齢人口は20年で33%減り、四県で最も大きく縮んだ。高齢者人口は28%増えたが2015年以降ほぼ頭打ちで、6市町村では既に高齢者数が減少へ転じている。高齢化率と働き手減少率の相関は−0.96と四県で最も強く、若く働き手も保たれた一角はほとんどない。都市・基盤厚型は秋田市・潟上市の2市にとどまり、若いベッドタウンの層を欠く。県全体が高齢化の同じ局面へ収れんし、これから訪れるのは高齢者すら減り人口がさらに細る段階になる。宮城の「これから来る波」も、その先に何が待つかを、秋田は先に映し出している。