レンタカーは大手以外の参入・増車傾向
レンタカーの供給がどこまで積み上がったかは、新千歳と那覇でレンタカーは不足から余剰局面へで見た。全国の車両数はコロナ前比で3割超、減車の底からは4割増えている。では、その増車を担ったのは誰か。結論から言えば、全国で見ると大手7社のシェアは低下し、増えた台数の約4分の3は大手以外が占める。大手の台数は全国でしか公表されないため、これを業界全体の構図として押さえ、北海道・沖縄で地域の裏づけを重ねる。訪日・国内の借り方の変化もあわせて、公開データで追う。
01増車を担ったのは大手でなく格安・中小
新千歳のレンタカーは、空港に大きな店を構える大手(トヨタ・ニッポン・オリックス・日産・タイムズ等)と、低価格を武器にフランチャイズや無店舗で広がる格安・中小(ニコニコ等のFC、個人・零細を含む)に大きく分かれる。時間課金のカーシェアは別モデルのため、本ノートでは扱わない。コロナ後の急な増車を、このどちらが担ったのかにある。
まず大手のシェアを全国で見る(大手各社の台数は全国合計しか公表されず、ここは業界全体の構図として押さえる)。全国レンタカー協会がまとめる大手7社の台数を全国の総台数で割ると、2021年3月末の31.3%から2025年3月末の29.6%へと1.7ポイント低下した。集計対象が9社に広がる2026年3月末は31.2%で、水準は約2ポイント上がるが低下の傾向は変わらない。トヨタは2021年から2024年で保有台数を2割超増やすなど、大手も着実に増車している。それでもシェアが下がるのは、全国の伸びに追いついていないからにあたる。
増えた台数の内訳を見ると、さらにはっきりする。全国の車両数が伸びた分を大手7社と大手以外に分けると、2021年から2023年の増加約13万台のうち大手は約3.6万台(約28%)にとどまり、残り約9.4万台(約72%)は大手以外にあたる。2023年から2025年の増加約15.4万台でも大手は約3.3万台で、約12.1万台(約79%)が大手以外にあたる。この大手以外の残差には、格安レンタカーや中小・個人のほか、大手集計に入らない中堅・地域チェーンも含まれる。データから言えるのは、供給を押し上げたのが大手そのものではなく、増車の約4分の3を占める大手以外だという点にあたる。この全国的な構図と整合的な動きは、地域でも示唆される。
02参入ラッシュの正体 ─ 事業者数の急増
なぜ大手以外がこれだけ台数を増やせたのか。答えは事業者数の推移にある。国土交通省の集計では、全国のレンタカー事業者数は2007年度の6,135から2020年度の12,433へと13年で約2倍に増えた。台数を持つ会社そのものが倍増したことが、供給の裾野を広げてきた(同統計は任意提出の報告書ベースで、2021年度の値は連続性に注意を要し、2022年度以降は未公表)。
参入をうながしたのは、いくつかの構造変化にある。第一に、2004年に許可の仕組みが車両ごとから事業者単位へと改められ、中古車販売店・整備工場・異業種がレンタカーに参入しやすくなった。第二に、中古車を使い低価格で貸す格安レンタカーが広がり、店舗を持たず個人や零細で営む無店舗型が増えた。コロナ後はこの動きが加速し、沖縄では2024年度に事業者が2,186社と初めて2千社を超え、10年で4倍に達した。県レンタカー協会に加盟しない事業者も多く、統計に表れない裾野はさらに広い。北海道でも、新千歳空港圏を管轄する札幌運輸支局の車両数はコロナ後に約6割増えた。地域別の大手・格安の内訳は取れないが、全国と同じく新規参入の裾野が広がった結果とみられる。
フランチャイズのニコニコレンタカーが、格安の広がりを牽引している。ガソリンスタンドや中古車店が加盟しやすい仕組みで店舗網を広げ、全国約1,500店舗を展開し、年間200万人以上が利用する規模まで広がった。低価格のネットワークが供給の裾野を押し広げている。大手が資本で増車するのとは違う、参入と分散による供給増にあたる。
03訪日と国内 ─ 借り方と格安シフト
誰が借りるかでも、たどり着く経路と選ぶ中身が分かれる。訪日客は来日前に海外OTAや多言語の比較サイトで予約を済ませることが多く、台湾・香港に強いKlook、古くから訪日向けに対応するToCoo!、たびらいなどが代表例で、多言語の画面と保険・補償の分かりやすさが決め手になる。国内客はじゃらん・楽天トラベル・skyticketや各社直販が中心で、共通ポイントや早期予約割引が比較の軸にあたる。じゃらんと楽天は、ニールセンのサイト利用者数調査(2022年4〜6月)でもそれぞれ1,368万人・1,068万人と二強にあたる。
| 観点 | 訪日客 | 国内客 |
|---|---|---|
| 主な予約経路 | 海外OTA・多言語比較サイト(Klook / ToCoo! / たびらい等) | 国内OTA(じゃらん / 楽天 / skyticket)・各社直販 |
| 比較の軸 | 多言語対応・保険 / 補償の分かりやすさ | 共通ポイント・早期予約割引・乗り捨て |
| 車種の指向 | コンパクト中心、長距離・グループでSUV / ミニバン、一部EV | 同様。北海道は長距離・悪路でSUV / ミニバン |
| 滞在・利用期間 | 旅行日数が長め(ドライブ客は約6日) | 週末・連休中心で相対的に短め |
予約経路別のシェア、車種構成比、平均貸渡日数を訪日 / 国内で分けた公開統計はない。本表は各社サービスと報道・調査からの構造整理にあたる。
車種は、北海道が長距離・悪路を走るためグループや荷物の多い旅でSUV・ミニバンが選ばれやすい(旅行情報サイトなどでも広く紹介される)。
需要側の温度差も大きい。観光庁の調査(2018年度、6空港での出国前ヒアリング)では、訪日客全体のレンタカー利用率は12%にとどまるのに対し、沖縄は61%と際立って高い。北海道は率としての公表値はないものの、後述のとおり貸渡件数が全国有数の規模まで積み上がっている。国内客については、格安のフランチャイズで会員数や利用回数が二桁で伸びていることが、価格を重視する層が厚みを増していることを示唆する。
04沖縄の需要と、これからの競争
大手以外の参入が最も濃く表れたのが、沖縄にあたる。訪日客のレンタカー利用率は全国の12%に対し沖縄は61%と突出し、レンタカーが観光の足そのものになっている。需要も強く、那覇空港の年間乗降客数は新千歳と那覇でレンタカーは不足から余剰局面へでみたとおり、2025年度に2,346万人と過去最多を更新した。
その需要を追って供給が急拡大した。沖縄の車両数は2022年3月末の3.19万台から2026年3月末の6.26万台へとほぼ倍増し、事業者数は10年で4倍・2,186社と全国で最も激しく増えた。増やしたのは大手ではなく、「わ」ナンバーを使い切って「れ」ナンバーが出回るほどの、格安・中小・個人の新規参入にあたる。沖縄は、全国の「大手以外が供給増を担う」構図が最も濃く出た地域といえる。
そして沖縄は、その先の局面にも先に入っている。2022年夏に全国で最も深刻だった不足は、増車が需要を追い越したことで解消し、いまは価格の下落が報じられるほどの供給過剰へと転じた。参入で膨らんだ裾野は、これから価格競争と淘汰の局面に向かう。車両ではなく受付・配車・洗車の人手や、レンタカーに偏った二次交通の設計が、次の課題として残る。
05北海道の需要と、これからの競争
供給の担い手が変わる裏で、北海道の需要も戻りは強い。道内の外国人向けレンタカー貸渡件数は、2015年度の約4.2万件から2019年に約9.9万件へ伸び、コロナ禍を挟んで2024年度は14.0万件(前年度比+44.1%)と過去最高を更新した。国・地域では台湾・韓国・香港などアジアが大半を占める。
回復の中身は量だけではない。訪日客のあいだではEVや輸入車を選ぶ動きもニッチな需要として一部に現れ、道内の外国人ドライバーによる人身事故は2026年上半期(1〜6月)に25件(前年同期16件)と過去最多ペースで、4カ国語のガイドや多言語カーナビ、北海道警のシミュレーターなどの対策が進む。ドライブ客は季節で目的地を変え、7〜9月は美瑛・富良野など道北へ向かう。地方部に泊まる割合はドライブ客で4割台後半(47.4%)と、来道客全体(3割弱)を上回り、レンタカーは道内各地への送客装置として働いている。
これからの競争は、価格と供給の担い手をめぐって進む。車両が足りるようになった局面で、大手以外のロングテールは価格競争と淘汰のリスクを抱え、繁忙期の逼迫はいまや車両数ではなく、受付・配車・洗車を担う人の不足から生まれる。大手は補償・EV・多言語対応で差別化を図り、格安・中小は価格とネットワークで裾野を取る。訪日の長期利用や地方分散が進むほど、レンタカーと公共交通を組み合わせた二次交通の設計も、地域と事業者の双方に問われる。
結論:レンタカーの供給増、約4分の3は大手以外が担う
コロナ後にレンタカーの車両数が急増しても、大手7社のシェアは2021年から2025年で1.7ポイント低下した。増えた台数の約4分の3は大手以外が担い、その背景には、13年で約2倍に増えた事業者数と、2004年の許可制度の見直し・無店舗型・フランチャイズによる参入ラッシュがある。沖縄で事業者が10年で4倍・2千社を超えたのは、その象徴にあたる。国内客のあいだでも価格を重視する層が厚みを増しており、供給過剰は大手の増車というより、大手以外の裾野(格安・中小・個人を含む)が広がった結果として読める。