世界電力は30年で2.4倍、次はデータセンターが牽引
世界の電力生産は1995年の約13,000TWhから2025年の約31,750TWhへと過去30年で約2.4倍に拡大した。同期間で中国は約10倍に伸び世界の約3割を占めるまでになった一方、米欧日の3地域は2000年代後半以降ほぼ横ばいで、伸びの主役は中国と他アジア(インド・ASEAN等)に移った。次の伸びを担うのはAIデータセンター需要である。日経の報道が伝える米ガートナー予測では、世界のDC電力消費は2026年の565TWhから2030年に1,200TWh超へ拡大し、世界電力消費に占めるDCのシェアは約1.8%から3〜4%へ駆け上がる見通し。
01世界電力消費は30年で2.4倍に
世界の電力生産は1995年から2025年までの30年間で約2.4倍に拡大した。年平均成長率に均すと約3%。同期間の世界の実質GDP成長率(年平均約2.8%)とほぼ同水準で、電力消費はGDPと連動しながら積み上がってきた。
2005年に約18,300TWh、2015年に約24,300TWh、2025年に約31,750TWhと、おおむね10年ごとに6,000TWh前後の上乗せが続く構造で、新興国の工業化と都市化が伸びを牽引してきた。コロナ禍の2020年でも世界全体は前年比で大きく落ち込まず、構造的な需要の強さが確認された。
02中国が30年で約10倍、世界の3割を占めるまでに
地域別に分けると、伸びの主役が中国・他アジアに集中していることが浮かび上がる。中国の電力生産は1995年の約1,000TWhから2025年の約10,580TWhへと約10倍に拡大し、単独で世界の約33%を占めるに至った。同期間で他アジア(インド・韓国・ASEAN等)は約5.6倍。一方で米国は約1.3倍、欧州(EU+UK+ノルウェー・スイス等)は約1.1倍、日本は約1.1倍にとどまる。
2025年単年の電力生産では中国が10,580TWhで首位、米国が4,520TWhで2位、インドが2,080TWhで3位、ロシアが1,193TWh、日本が1,030TWhで続く構造(出所:EI Statistical Review)。1995年時点では米国が圧倒的トップで中国はその3分の1以下だった構図が、30年で完全に逆転した。
03地域別シェアの構成変化
過去30年で世界の電力消費の地図は塗り替わった。米国・欧州・日本の3地域は1995年時点で世界の約54%を占めていたが、2025年には約27%に半減した。代わって中国が7.6%→33.3%へ、他アジアが6.1%→14.2%へとシェアを伸ばし、アジア圏(中国+日本+他アジア)合計で世界の約51%を占める。
絶対量で見れば米欧日も微増しているが、世界全体の伸びが大きすぎてシェアは縮小する構造。電力市場における「先進国の比重低下」は、過去30年で進んだ最も大きな構造変化のひとつである。
041人あたり電力消費の格差
絶対量で世界の3割を占める中国も、1人あたりに直すと米国の約6割。世界全体の電力消費を人口で按分すると、先進国と新興国の格差は依然として大きい。米国の1人あたり電力消費は約12,800kWh/年、日本は約7,800kWh、中国は約7,500kWh、EUは約5,500kWh、世界平均は約3,700kWh、インドは約1,400kWh前後で推移している(直近年、出所:IEA・World Bank)。
中国は2010年代半ばに1人あたり電力消費でEU平均を超え、現在は日本水準に接近している。インドは中国・米国とは桁が違う1,400kWh台で、今後の経済発展に伴う電力需要の伸びしろが大きい。
052024年の電源構成 ─ 化石が過半
世界の電力消費の約59%は依然として化石燃料(石炭+天然ガス+石油等)でまかなわれている。Ember「Global Electricity Review 2025」によると2024年の電源構成は、石炭34.4%、天然ガス22.0%、その他化石(石油等)2.8%、水力14.3%、原子力9.0%、風力8.1%、太陽光6.9%、その他再エネ(バイオ・地熱等)2.6%。
低炭素電源(水力+原子力+風力+太陽光+その他再エネ)の合計は約41%。Emberは2024年の化石燃料シェアが1940年代以来初めて60%を割り込んだと整理する。とくに太陽光と風力の伸びが大きく、2024年単年では低炭素電源の追加量が世界の電力需要増加分を上回り、化石燃料発電量は構造的にピークアウトしつつある(出所:Ember)。
06次の伸びはAIデータセンター ─ 日経/ガートナー予測
日経の報道によれば、米調査会社ガートナーは2026年の世界のデータセンター電力消費を565TWhと予測し、前年比26%増と見込む。うちAIサーバー向けは175TWhで前年比80%以上の伸びとなり、データセンター全体の約30%を占める。2027年にはAIサーバーの消費電力が従来型サーバーを上回り、2030年には1,200TWh超に達する見通し。
電力需要(kW単位の設備容量)では、データセンター向けが2026年132GWから2030年290GWへとほぼ倍増する。世界全体の電力消費に対する比率では、2026年時点でDC消費565TWhは世界合計約32,000TWhの約1.8%、2030年に1,200TWh超となれば約3〜4%を占める計算になる。過去30年は中国の工業化が主役だったが、次の伸びの一翼はAI・データセンターが担う構図である。
世界全体の電力消費は過去30年で2.4倍に拡大したが、今後はDC需要がその伸びの一部を構造的に押し上げる。2026年から2030年の4年でDC電力消費は約2.1倍、DC電力需要(設備容量)は約2.2倍と予測される。これは過去30年で中国が電力消費を10倍化したペースには及ばないが、伸びの単位面積あたりの濃度(DC立地周辺での電力需要集中)は前例のない水準になる。これがハイパースケーラーDCの立地選定、変電設備、送電網増強、SMR・再エネ調達といった上流ボトルネックの議論に直結する。
結論:過去30年は中国、次の伸びはAIデータセンター
世界の電力生産は1995年から2025年で約2.4倍に拡大し、その伸びの主役は中国(×10倍)と他アジア(×5.6倍)だった。米欧日の3地域は20年近く横ばいで、世界における比重は1995年の54%から2025年の27%に半減した。ガートナーは2026年から2030年でデータセンター電力消費が約2.1倍、電力需要が約2.2倍に拡大すると予測する。世界全体の電力消費に対するDCシェアは2026年の約1.8%から2030年に3〜4%へと駆け上がり、伸びの濃度(特定立地への集中)が前例のない水準になる構造変化が進む。
Ember「Global Electricity Review 2025」(2024年世界電源構成・化石/低炭素比率)/Energy Institute「Statistical Review of World Energy 2025」(国別電力生産TWh、長期時系列)/IEA「Electricity 2025」(電力需要見通し、地域別需要分析)/IEA・World Bank(1人あたり電力消費)/日本経済新聞「データセンター電力消費26%増 26年、AI向けサーバー普及で」(2026/6/15)/米ガートナー(データセンター電力消費・電力需要予測)。
※本稿は概数ベースで整理しており、各数値は公表元・改訂版によって数百TWh単位の誤差がある。